築古戸建ての耐震リノベーションで失敗しないために ― 等級3相当の耐震性能と工事期間・仮住まいのリアル
【この記事の結論:30秒でわかる要点】
- ✅ 耐震性能:現在の建築基準法(等級1)の1.5倍(等級3相当)を目指すべき
- ✅ 工事期間:設計〜引渡しまで約半年が目安
- ✅ 居住の可否:フルスケルトン工事では「仮住まい」が必須
1. はじめに:地震が来るたびに「この家、大丈夫かな」と感じていませんか?
築30年、40年と経った戸建てにお住まいの方の多くが、こんな不安を抱えています。
- 次に大きな地震が来たら、この家は耐えられるんだろうか…
- 壁にヒビがあるけれど、これって危険サイン?
- 建て替えまでは予算的に難しいけど、できるだけ安全にしておきたい
- 老後を考えると、今のうちに安心できる住まいにしておきたい
さらに、
- 耐震工事って本当に効果があるの?
- 工事中はどこで暮らせばいいの?
- 悪徳業者に高いお金だけ取られてしまわないか…
といった不安から、興味はあっても一歩踏み出せずにいる方も少なくありません。
この記事では、東京23区の築古戸建てを対象に、フルスケルトンの性能向上リノベーションを行っている工務店としての“本音”をお伝えします。
以下のような内容を、専門家目線で分かりやすく解説します。
- 耐震リノベーションでどれくらい家が強くなるのか
- 実際の工事期間・全体スケジュール
- 「住みながら工事」は可能なのか?仮住まいは必要?
2. 耐震リノベーションで家はどれくらい強くなるのか?
2-1. 「今の建築基準法」を1.0としたときの目標値
耐震性能を語るとき、よく使われるのが
- 構造計算上の指標(Is値など)
- 耐震等級
といったものです。
ここでは専門用語をかみ砕いて、 「今の建築基準法ギリギリを1.0としたとき、どこまで引き上げるのか?」 という考え方でお話します。
私たちがご提案している「性能向上リノベーション」では、
現行の建築基準法レベルを「1.0」とした場合、約1.5倍程度の耐震性能(= 耐震等級3相当)を目標としています。
2-2. 「耐震等級3相当」とはどういうイメージか
ざっくりとしたイメージですが、
- 耐震等級1
現行の建築基準法を満たす最低ライン。 - 耐震等級2
等級1の1.25倍程度の強さ。 - 耐震等級3
等級1の1.5倍程度の強さ。防災拠点となる建物などもこのレベル。
つまり、 「今の基準を満たすだけ」ではなく、「さらに1.5倍の耐震力を持たせる」 というのが、私たちの性能向上リノベーションの考え方です。
2-3. 築古戸建てで等級3相当を目指す意味
築40年、50年と経った木造戸建ての多くは、
- そもそも建てられた当時の耐震基準が今より甘い
- 経年劣化やシロアリ被害で、図面上の強さより弱くなっている
といったリスクを抱えています。
そこに「現行基準ギリギリまで」引き上げるだけでは、 今後の大地震に対して十分とは言い切れません。
だからこそ私たちは、
「どうせお金をかけて一度家を裸にするなら、『今の基準ギリギリ』ではなく『その先』まで上げましょう」
というスタンスで、耐震等級3相当を目標に設計・施工を行っています。
3. フルスケルトンの耐震リノベーションとは?
3-1. 「フルスケルトン」にする理由
よくお問い合わせでいただくのが、
「部分的に壁を補強するだけではダメなんですか?」
という質問です。
結論から言うと、状況によっては部分補強で改善できるケースもあります。
ただし、築古戸建てに関しては、フルスケルトンをおすすめする理由がいくつかあります。
- 構造体(柱・梁・土台)の状態をすべて目視で確認できる
- シロアリや腐朽による劣化部分を一つ残らず補修できる
- 耐力壁の配置バランスを1階・2階を通してしっかり計画できる
- 断熱性能・耐震性能・間取り変更を一体で計画できる
特に「見えない部分」の劣化は、家の強さに直結します。
表面だけ補強しても、土台や柱が傷んでいれば本当の意味で“強い家”にはなりません。
そのため、私たちは
「本気で家の寿命を伸ばし、安心して暮らせる家にしたい」
という方には、フルスケルトンでの性能向上リノベーションをご提案しています。
3-2. フルスケルトン耐震リノベの流れ
フルスケルトンとは、ざっくり言えば
「屋根と主要な構造体を残し、それ以外を一度まっさらな状態にする」 イメージです。
大まかな流れは以下のようになります。
- 現地調査・ヒアリング
- 構造診断・耐震診断
- 基本設計(間取り・性能・予算の方向性のすり合わせ)
- 実施設計(構造計算・詳細図面作成)
- 解体・フルスケルトン
- 構造補強工事(耐力壁、金物、基礎補強など)
- 断熱工事・設備工事
- 内装工事・仕上げ
- 完成・お引き渡し
4. 工事期間はどれくらい?全体で「半年」前後が目安
4-1. 設計〜工事完了までのスケジュール感
実際にお客様からのご相談で一番多いのが、
「どれくらいの期間、家を空けないといけないのか」
というご質問です。
私たちがフルスケルトンで耐震・断熱を含めた性能向上リノベーションを行う場合の目安としては、
- 設計期間(現地調査・診断〜実施設計):1〜2ヶ月程度
- 工事期間(解体〜お引き渡し):約4ヶ月〜最長で6ヶ月程度
トータルで見ると、 ご相談〜お引き渡しまで「約半年」前後を見ていただくことが多いです。
もちろん、
- 建物の大きさ
- 劣化状況
- 間取り変更の規模
- 追加のご要望(収納、設備、インテリアなど)
によって工期は前後しますが、 「設計も含めて半年くらい」をひとつの目安としてお考えください。
4-2. なぜそんなに時間がかかるのか?
「半年」と聞くと、少し長く感じるかもしれません。
しかし、耐震リノベーションの場合、“急いでやる”ことの方がリスクです。
- 構造計算や補強計画を丁寧に行う必要がある
- 解体して初めて見つかる劣化部分への対応が必要になる
- 同時に断熱や設備も見直すことで、将来の光熱費やメンテナンスを軽減できる
など、しっかり時間をかけることで、 「やって良かった」と心から思えるリノベーションになります。
5. 「住みながら工事」はできる? → フルスケルトンでは基本的に難しいです
5-1. 部分リフォームとの大きな違い
水回りの交換や内装の張り替えなど、 部分的なリフォームであれば「住みながら工事」が可能な場合も多くあります。
しかし、今回のように
- 耐震性能を根本から見直す
- フルスケルトンにして構造からやり直す
- 断熱・設備も含めて“家全体”を性能向上させる
という工事では、
安全面・工期・品質の観点から、住みながらの工事は基本的におすすめできません。
5-2. フルスケルトンで住めない主な理由
- 家の中が「ほぼ屋外状態」になる期間がある
壁や床をすべて撤去するため、雨風・埃・騒音の面でも生活は困難です。 - 構造体があらわになるタイミングは非常にデリケート
工事中の安全確保が重要で、お住まいの方が出入りすること自体が危険になる場合もあります。 - 工事効率が極端に下がり、工期も延びてしまう
「今日はここで寝るから、この部屋は触れないで」などの制約があると、 補強計画通りに工事が進められなくなります。
このような理由から、 フルスケルトンの性能向上リノベーションでは、原則として仮住まいをお願いしています。
もちろん、具体的な工事内容や建物の状況によっては、 一部住みながらで対応できるケースもゼロではありません。
その場合は、現地調査の上で、メリット・デメリットを率直にお伝えした上で検討します。
6. 仮住まいはどうする?現実的な選択肢と考え方
6-1. よくある仮住まいのパターン
フルスケルトンリノベーションのお客様の多くは、 以下のような形で仮住まいをされています。
- 賃貸マンション・アパートを一時的に借りる
- ご両親やご親族の家に同居させてもらう
- 近くのマンスリーマンションを活用する
立地やご家族構成にもよりますが、 工事期間4〜6ヶ月の間、生活のしやすさを優先して選ぶ方が多いです。
6-2. 仮住まい費用も含めて「総予算」を考える
耐震・断熱を含む性能向上リノベーションは、 どうしても2,000万円前後以上のご予算となるケースが多くなります。
そこに加えて、
- 仮住まい家賃
- 引っ越し費用(2回分)
なども発生します。
私たちは、最初のご相談の段階で、
「工事費用 ◯◯円前後 + 仮住まい・引っ越し費用 ◯◯円前後で、トータルでこのぐらいのご負担になります」
といった形で、できるだけ“全部込み”での概算をお伝えするようにしています。
7. 「本当にやる意味あるの?」という不安への答え
7-1. 耐震リノベの価値は「安心して住み続けられる期間」
ここまでお読みいただき、
「半年も家を空けて、仮住まいまでして…そこまでやる価値があるの?」
と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
私たちが耐震リノベーションをご提案する一番の理由は、
「地震が来るたびにビクビクしながら暮らすのか」「ある程度の安心感を持って暮らせるのか」
という、精神的な安心感の差です。
また、構造体や断熱・設備を一度に見直すことで、
- 将来の大規模な修繕の頻度を減らせる
- 光熱費を抑えられる
- 調湿や断熱性能が上がり、体にも優しい住環境になる
といったメリットも期待できます。
7-2. 「建て替え」と「リノベ」、どちらがいいか?
築古戸建ての方の中には、
「この際、建て替えにした方がいいのかな?」
と迷われる方も多くいらっしゃいます。
一般的に、
- 建て替え
・構造・間取り・設備をすべて新築として計画できる
・ただし解体から新築までのトータルコストが、リノベより高くなりやすい
・建蔽率や容積率・斜線制限などの影響を、現行法で改めて受ける - 性能向上リノベーション
・既存の構造を活かしつつ、耐震等級3相当まで性能アップを図れる
・既存不適格など、敷地条件によっては「建て替えより有利」なケースも
・愛着のある家の記憶を残しつつ、性能だけ現代レベルに引き上げられる
| 比較項目 | 建て替え | 性能向上リノベーション |
|---|---|---|
| 自由度 | すべて自由に設計可能 | 既存の構造・形状に一部制約あり |
| 法規制 | 現行法が適用(セットバック等で狭くなる可能性あり) | 既存不適格でも今の広さを維持しやすい |
| コスト | 解体+新築費で高額になりやすい | 建て替えの約70〜80%程度に抑えられる傾向 |
| 耐震性 | 最高等級を取得しやすい | 補強により新築同等(等級3相当)まで向上可能 |
「どちらが絶対に正しい」という答えはありません。
だからこそ私たちは、 最初のご相談で「建て替え・リノベの両方の可能性」を一緒に整理し、
立地・ご予算・家族構成・将来の暮らし方を踏まえて、 最適な選択肢をご提案するようにしています。
8. 実際のお客様からのご質問と、プロとしての本音
ここまでの内容は、実際にいただくご相談を元にしています。
改めて、よくあるご質問と、それに対する私たちの“本音の回答”をまとめます。
Q1. 耐震工事で、本当に家は強くなりますか?
A. はい。計算と施工をきちんと行えば、明確に性能は上がります。
私たちの性能向上リノベーションでは、
「今の建築基準法を1.0としたとき、約1.5倍=耐震等級3相当」
を目標に設計・施工を行っています。
Q2. 工事期間はどのくらい見ておけばいいですか?
A. 設計も含めて、全体で“約半年”前後を目安にしてください。
工事期間だけで言えば、4〜6ヶ月程度が多いです。
建物の規模や劣化状況によって前後しますので、
現地調査の上で、より具体的なスケジュールをご提示します。
Q3. 住みながら工事はできますか?
A. フルスケルトンでの性能向上リノベーションでは、基本的に難しいです。
部分的なリフォームであれば可能な場合もありますが、
耐震・断熱を含めた大規模なリノベーションでは仮住まいをお願いしています。
Q4. 予算はどのくらいかかりますか?
A. 建物の大きさやご希望内容によって大きく変わりますが、
耐震+断熱+間取り変更を含むフルスケルトンリノベーションの場合、2,000万円前後〜がひとつの目安になります。
初回相談時に、概算の費用感と優先順位の整理を一緒に行います。
9. まとめ:一度きりの大きな決断だからこそ、「納得してから」進めてください
耐震リノベーションは、決して安い買い物ではありません。
工事期間も決して短くはありませんし、仮住まいという負担もあります。
だからこそ私たちは、 「不安なまま、勢いだけで契約してほしくない」と考えています。
- 本当にこの家に、お金をかける価値はあるのか
- 建て替えとリノベ、どちらが自分たちの人生に合っているのか
- 子どもたちの代まで、この家を残したいのか
こうしたことを一緒に整理しながら、
性能・費用・スケジュールを“見える化”することが、私たちの役割だと思っています。
10. まずは「この家、大丈夫?」という不安を、プロにぶつけてみてください
もしあなたが今、
- 築30年以上の戸建てにお住まいで、地震に不安がある
- 中古の築古戸建てを購入してリノベーションを検討している
- 「耐震」「断熱」「間取りの不便さ」を一度に解決したい
とお考えであれば、まずは現地調査と簡易診断から始めてみませんか?
私たちがお手伝いできること
- 現地での劣化状況・構造の確認
- 耐震性能の簡易診断(必要に応じて詳細診断)
- 建て替えと性能向上リノベ、それぞれのメリット・デメリット整理
- おおよその予算帯と工期の目安のご提示
「相談したら絶対に工事しなきゃいけない」 ということは一切ありません。
“この家に、これだけの手をかければ、これくらい安心して住み続けられるようになる”
そのイメージを持っていただくことが、最初の一歩だと考えています。
✅ 行動のご提案
- 「うちの家でも、耐震等級3相当を目指せるの?」
- 「工事期間中、どのくらい仮住まいが必要になりそう?」
- 「概算でもいいので、予算感を知りたい」
こうした疑問がひとつでもあれば、 お気軽にお問い合わせフォームやお電話からご相談ください。
大事なご家族を守る「住まいの安全」を、一度、プロと一緒に真剣に考えてみませんか?
おわりに:刈田からのメッセージ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回の築古戸建ての耐震リノベーションで失敗しないために ― 等級3相当の耐震性能と工事期間・仮住まいのリアルはいかがでしたでしょうか。
このようなリフォームから「キッチンリフォームだけ考えていたけど、この際に窓も変えようかな?」というご相談も大歓迎です。
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【記事監修】ハイウィル株式会社 建築士チーム
「弊社は一級建築士・二級施工管理技士が多数在籍し、『ゾーン断熱』を含む住宅性能向上のプロフェッショナルです。この記事は、宅地建物取引士の視点に加え、建築施工の専門家の知見に基づき監修しています。」
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